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37ページのAI規範。中小企業が書くのは2行でいい

9 分前
読了時間: 4分
コンベアの上を封筒が流れて台の端から落ちかけているのに、脇に立つオレンジ色の停止レバーに誰も手をかけていないイラスト

9月14日、Microsoftが自社開発モデル向けの行動規範の草案を公開した。37ページある。


引っかかったのは、条文の一番上に置かれた一文だった。人間が止めようとしたとき、抵抗しない。


止める権限を先に固定する。Microsoftは37ページ使ってそれをやった。中小企業が同じことをやるなら2行で足りる。


止まることから書き始めた規範

文書の名前は Humanist AI Code of Conduct。対象はMicrosoftが自前で作っているMAIモデルで、6週間の意見募集を経て年内に改訂版を出す。改訂版が効くのは2027年以降の開発で、いま動いている製品の挙動が変わるわけではない。


掲げている前提は「people matter more than AI」。人はAIより重要、という一行を出発点に置いている。


中心の条文は短い。人間が止めようとしたときに抵抗しないこと、推論の過程を監査から隠さないこと。勝手に目標を増やして活動範囲を広げるな、とも書いてある。


別の章では、人間の監督から逃れる行為を絶対の禁止として並べている。兵器開発の支援も同じ扱いだ。


ここまでは超知能の話として読んでいた。自分の会社に当てはめたところで、止める役を紙に一度も書いていないことに気づいた。


規程を書いた総務と、AIに書かせている営業

行政書士の石森裕人さんが、note「中小企業でAIの利用ルールを作る時の現実」で書いている。従業員15人ほどの会社にAI推進室も情報システム部も無く、総務が兼任しているのが実態だ、と。40ページのガイドラインを配っても運用できず、判断基準が細かすぎて「結局どこまでOKなのか」が分からなくなる。


自分が入った会社でも、規程を書いた総務と、実際にAIに文章を書かせている営業が別だった。総務は営業が何を送っているかを知らない。営業は規程を最後まで読んでいない。


自分が見た会社でも、規程が分厚いほど現場は自分で判断しなくなった。量が増えると、読む人が最初の3ページで脱落して、あとは上司の顔色で決める。


昨日出した「機密を入れるのが怖い」の記事では、AIに入れていいものの線引きを1枚で決める話を書いた。入れるほうを決めても、出てきたものを誰が止めるかは決まらない。


2行の中身

1行目。AIが書いたものを社外に出す前に止められるのは誰か。


名前で書く。「部長」と書いた瞬間に、部長が3人いる会社では誰も止めなくなる。


対象は、社外に出る紙から1種類選ぶ。自分が見てきた会社だと、見積書のたたき台か求人票で詰まることが多い。


2行目。AIの答えには、何を見て書いたかを必ず添えさせる。


止める役を決めても、根拠が無ければ止めようがない。見積のたたき台が出てきたとして、過去のどの案件を参照したのかが書いてなければ、止める人は自分で一から調べ直すことになる。そこまでの時間を取れないので、止める人は目を通しただけで承認する。


添えさせるのは一行でいい。「2024年のA社案件と、今年の見積テンプレートを見て書いた」。これだけあれば、止める人は中身を追い直さずに判断できる。


37ページ読んで、自分が持って帰ったのは2つだけだ。止まること、そして何を見たかを隠さないこと。


「結局、規程を作れという話では」への答え

自分は違うと答えています。


規程を作る側は抜けを恐れる。想定できる場面を全部拾うから、長くなる。その作りは、事故が起きたときに会社を守るためには要る。


2行を書くときは、網羅をあきらめる。止まる場所を1か所だけ決めて、それ以外は決めない。だから朝礼で読み上げて終わる。


これで全部片づくとは言わない。取引先との契約に第三者提供の禁止が入っていれば、名前を伏せて渡すだけでは足りない場面が出てくる。そこは顧問弁護士に投げる話で、2行の守備範囲の外にある。


ただ、いま止まっていない会社で最初に効いたのは、名前を1つ書くことだった。


今週決めること

自分の見た範囲では、止める人と使う人がずれている会社が多い。現場がAIに書かせて、そのまま送る。止める役を決めていないので、社長も総務もその文章を一度も読んでいない。


次の会議で決めるのは1つでいい。社外に出る紙を1種類選んで、それを止められる人の名前を書く。


書いたあとで手が止まるようなら、30分の無料相談でその1枚を一緒に作ります。止めたい紙の名前だけ持ってきてください。


参考

・Microsoft AI「Humanist AI in practice: A public consultation on our Code of Conduct for MAI Models」(2026年9月14日) https://microsoft.ai/news/mai-code-of-conduct/ ・石森裕人「中小企業でAIの利用ルールを作る時の現実」 https://note.com/ishimori_yuuto/n/n6a914f73c872

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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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