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AIで作った計画書を専門家に見せる前に、足す1枚

7 分前
読了時間: 4分
作業台の上に完成した革靴が置かれ、その隣に靴を作るときに使うオレンジ色の木型が立てかけてあるイラスト

AIで作った事業計画書や資金繰り表を持って、銀行や税理士に相談に行く経営者が普通になった。融資支援の実務家も、note に「AIだけで、事業計画書がここまで作れる時代になった」と書いている。


持って行くものを1枚増やしてほしい。AIに渡した条件文を、そのままコピーして印刷したもの。3行で足りる。


これが無いと、相談の最初の20分が復元作業で消える。


AIが疑わないもの

「値上げはできない」「この業務は外せない」と書いて聞けば、AIはその条件のもとで最良の答えを返してくる。渡された前提のほうを疑うことはしない。


返ってきた答えは、たいてい正しい。前提の点検だけが含まれていない。


資金繰り表なら、「来期の売上は今期並み」と入れた時点で全部がその線で組まれる。相談相手が最初に知りたいのは、その「今期並み」をどこから持ってきたかだ。受注残を数えたのか、去年と同じだろうと置いたのか。どちらでも表の見た目は変わらない。


松本佳典氏はコラムで、生成AIで作った中期経営計画が「カタチだけの計画」になる危険を書いている。ひな形の数値がそのまま通ってしまうからだ。


ただ、こうした指摘が直す人として想定しているのは、書いた本人のほうだ。


相談が長引く場所

伴走先の会議に、AIで作った資金繰り表や事業計画書が出てくることが普通になった。自分が最初に訊くのは、だいたい同じことだ。「この来期の売上、どこから持ってきましたか」。


AIに聞いてから来る人ほど話が早い、とはならなかった。質問は前より具体的になっている。「この設備投資の回収年数をどう見ますか」まで来る。


ただ、その具体的な質問が固まった前提の上に立っていると、ほどくのに時間がかかる。速くなったのは資料を作るところだけだ。1時間の打ち合わせなら、最初の20分は前提の復元に消える。


理由は資料の見た目にある。人が手で書いた計画書には、書いた人の迷いが残っていた。表現の揺れと、埋まっていない欄。相談相手はそれを「ここは決めていません」と読んでいた。


AIが整えた計画書では、本人が決めた数字と、AIが埋めた数字が同じ字で同じ位置に並ぶ。だから相談相手は、どこが本人の判断か見分けられない。復元から始めることになる。


一緒に出す3行

まず、前提として渡した制約。「値上げはしない」「人は増やさない」「この取引先は切らない」。AIに書いた文をそのまま持ってくる。


数字の出どころも並べる。「来期の売上は今期の実績をそのまま置いた」「原価率は去年の決算書から取った」。


最後に、訊いた質問。「この条件で来期の資金繰りはどうなりますか」をそのまま写す。要約するな。


やり方は、AIとの会話をコピーして貼るだけだ。整えるな。整えると、決めたところと決めていないところが同じ見た目になって、同じことがもう一度起きる。


「前提まで見せると分かっていない人に見える」への答え

逆だった。前提を言える人は、決めたことを言える人として扱われる。


答えだけ出す人のほうが、相談相手は慎重になる。どこまで本人が決めたのか分からないので、全部を疑うところから始めるしかない。前提が先に出ていれば、疑う場所が1つに絞られる。


正直に書くと、条件文を出しても前提が間違っていること自体は消えない。「値上げはできない」が思い込みなら、思い込みのまま残る。消えるのは、それに気づくのが3か月後になる事故のほうだけだ。


AIを使わずに自分で書けばいい、という話にもならない。手が速くなったこと自体には価値がある。足すのは1枚で済む。


次の相談に持って行くもの

答えを1枚、条件を1枚。順番は条件が先だ。


税理士や銀行の担当者が見たいのは、あなたが何を決めたかで、それはAIの出力には書かれていない。書いてあるのは、あなたが決めたことの結果だけだ。



参考:note「AIだけで、事業計画書がここまで作れる時代になった」(根本太一/インバンカー代表)/松本佳典「生成AIで作った事業計画は本当に使えるのか?経営者が陥る『カタチだけの中期経営計画』の危険性」/「ChatGPTで事業計画書を作れる?AI活用の限界と人が書くべきポイント」

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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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