AIで作った計画書を専門家に見せる前に、足す1枚

AIで作った事業計画書や資金繰り表を持って、銀行や税理士に相談に行く経営者が普通になった。融資支援の実務家も、note に「AIだけで、事業計画書がここまで作れる時代になった」と書いている。
持って行くものを1枚増やしてほしい。AIに渡した条件文を、そのままコピーして印刷したもの。3行で足りる。
これが無いと、相談の最初の20分が復元作業で消える。
AIが疑わないもの
「値上げはできない」「この業務は外せない」と書いて聞けば、AIはその条件のもとで最良の答えを返してくる。渡された前提のほうを疑うことはしない。
返ってきた答えは、たいてい正しい。前提の点検だけが含まれていない。
資金繰り表なら、「来期の売上は今期並み」と入れた時点で全部がその線で組まれる。相談相手が最初に知りたいのは、その「今期並み」をどこから持ってきたかだ。受注残を数えたのか、去年と同じだろうと置いたのか。どちらでも表の見た目は変わらない。
松本佳典氏はコラムで、生成AIで作った中期経営計画が「カタチだけの計画」になる危険を書いている。ひな形の数値がそのまま通ってしまうからだ。
ただ、こうした指摘が直す人として想定しているのは、書いた本人のほうだ。
相談が長引く場所
伴走先の会議に、AIで作った資金繰り表や事業計画書が出てくることが普通になった。自分が最初に訊くのは、だいたい同じことだ。「この来期の売上、どこから持ってきましたか」。
AIに聞いてから来る人ほど話が早い、とはならなかった。質問は前より具体的になっている。「この設備投資の回収年数をどう見ますか」まで来る。
ただ、その具体的な質問が固まった前提の上に立っていると、ほどくのに時間がかかる。速くなったのは資料を作るところだけだ。1時間の打ち合わせなら、最初の20分は前提の復元に消える。
理由は資料の見た目にある。人が手で書いた計画書には、書いた人の迷いが残っていた。表現の揺れと、埋まっていない欄。相談相手はそれを「ここは決めていません」と読んでいた。
AIが整えた計画書では、本人が決めた数字と、AIが埋めた数字が同じ字で同じ位置に並ぶ。だから相談相手は、どこが本人の判断か見分けられない。復元から始めることになる。
一緒に出す3行
まず、前提として渡した制約。「値上げはしない」「人は増やさない」「この取引先は切らない」。AIに書いた文をそのまま持ってくる。
数字の出どころも並べる。「来期の売上は今期の実績をそのまま置いた」「原価率は去年の決算書から取った」。
最後に、訊いた質問。「この条件で来期の資金繰りはどうなりますか」をそのまま写す。要約するな。
やり方は、AIとの会話をコピーして貼るだけだ。整えるな。整えると、決めたところと決めていないところが同じ見た目になって、同じことがもう一度起きる。
「前提まで見せると分かっていない人に見える」への答え
逆だった。前提を言える人は、決めたことを言える人として扱われる。
答えだけ出す人のほうが、相談相手は慎重になる。どこまで本人が決めたのか分からないので、全部を疑うところから始めるしかない。前提が先に出ていれば、疑う場所が1つに絞られる。
正直に書くと、条件文を出しても前提が間違っていること自体は消えない。「値上げはできない」が思い込みなら、思い込みのまま残る。消えるのは、それに気づくのが3か月後になる事故のほうだけだ。
AIを使わずに自分で書けばいい、という話にもならない。手が速くなったこと自体には価値がある。足すのは1枚で済む。
次の相談に持って行くもの
答えを1枚、条件を1枚。順番は条件が先だ。
税理士や銀行の担当者が見たいのは、あなたが何を決めたかで、それはAIの出力には書かれていない。書いてあるのは、あなたが決めたことの結果だけだ。
数字を1つ自分で選ぶ話は聞けばダッシュボードが出る時代に、残った1つの仕事に、AIの答えを1個で終わらせない読み方は経営者が一次データに直接触れる時代、次に問われるのは「点か、因果か」に書いた。
参考:note「AIだけで、事業計画書がここまで作れる時代になった」(根本太一/インバンカー代表)/松本佳典「生成AIで作った事業計画は本当に使えるのか?経営者が陥る『カタチだけの中期経営計画』の危険性」/「ChatGPTで事業計画書を作れる?AI活用の限界と人が書くべきポイント」






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