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AIの当たりの使い方を拾う機能が出た。紙1枚で代用する

10 分前
読了時間: 4分
生地の上に同じ星形の抜き跡が繰り返し並んでいて、手がオレンジ色の抜き型を1つだけ持ち上げているイラスト

9月10日、AnthropicがClaude Enterprise向けに「Smart Reports」をベータで出した。管理者が対象のチームと期間を指定すると、Claudeがその範囲の社員のやりとりを読んで、文章とグラフで報告してくる。ベータのあいだは1組織あたり月10本まで無料で、さかのぼれるのは直近28日まで。


報告する中身は4つある。どんな仕事が進んだか、いくらかかったか、どこで詰まったか、そして繰り返し出てくるやり方のうち、共有の手順としてまとめる価値があるもの。


最後の1つだけ、他と性質が違う。


請求書の説明で終わる3項目と、4つ目

前の3つは、平たく言えば請求書の説明だ。いくら使って、何に使って、どこで止まったか。更新の会議で「払った分は回収できています」と言うための材料で、管理者が読んだ翌日、現場の仕事は1ミリも変わらない。


使った量は数えられても、その作業が何を世に出したかは数えられない。larridinの「How to Measure Claude Usage on Claude Enterprise」にも、同じ指摘が書いてあった。


4つ目は違う。繰り返し出てくるやり方を拾って手順に束ねると、次に同じ仕事をする人の手元に、書き出されたものが1つ増える。変わるのは、来月その仕事にかかる時間だ。


Anthropicはここで、AIのうまい使い方を人の頭から取り出して外に置く作業を、製品の機能にした。この作業には金が取れる、と判断したわけだ。そこが今回いちばんの発見だと思っている。なぜ金が取れるのかは、どの現場にも1人はいる「AIがうまい人」を見れば分かる。


うまい使い方が1人の中で止まる場所

伴走に入ると、どの会社にも必ず1人、AIがうまい人がいる。だいたい30代で、言われなくても勝手に試していて、他の人の3倍くらいの速さで下書きを出す。


問題はその先だ。その人の依頼の書き方は、その人のチャット履歴の中にしかない。隣の席の人が同じ仕事をするとき、また一から自分の言葉で説明し直している。半年経っても、うまい人は1人のままだ。


伴走先を並べて見ると、AIが定着した会社とそうでない会社の差は、同じ依頼を2回目にしたときに、1回目の書き方が本人以外の手元に残っているかどうかで付いていた。うまい人の有無では説明がつかない。どの会社にもいるからだ。


残っていない会社では、その人が長めに休んだり担当替えになったりした時点で、AIで回していた仕事が元の手作業に戻る。厄介なのは、戻ったあとに誰もそれを異常だと思わないことだ。前のやり方に戻っただけ、で片付いてしまう。


社内プロンプト集が、増えるほど開かれなくなる理由

「だから社内でプロンプトを共有しよう」で止めると、効かない。検索すれば、業務ごとにひな形にして全社に配る手順の記事がいくらでも出てくる。方向は合っている。


ただ、たいていは集めるところで止まる。共有フォルダに50件たまったプロンプト集は、3か月後には誰も開いていない。数が増えるほど、いま自分がやっている作業に当たるのがどれなのか、探す手間のほうが自分で書く手間を上回るからだ。


Smart Reportsが機械にやらせているのは、28日分の記録を読んで繰り返しの多い順に並べる作業だ。集めるだけなら共有フォルダで足りる。Anthropicは、多い順に並べて上から数件に絞るところに金を払う価値があると判断して、この機能を作った。


効いているのは順番だ。そして順番を付ける作業は、社員が数十人までの会社なら機械を買わなくてもできる。


先月いちばん多かった依頼を、1つだけ

中小企業にSmart Reportsは要らない。Enterpriseプランは社員20人の会社が出す額ではないし、そもそもその規模なら、先月いちばん多かった依頼くらい全員思い出せる。


やることは月に1回。今月いちばん多かった依頼を1つだけ選んで、手順書に起こす。


書く中身は3行で足りる。AIに何を渡すか、何を返させるか、どこを人が見るか。


月次の請求チェックなら、こう書く。請求書のPDFと先月の集計表を渡す。取引先ごとに金額と前月差を表で20行以内、差が1割を超えた行は理由の欄を空にして返す。人が見るのは、その空欄の行だけ。10分で書ける。体裁を凝り始めると、書くこと自体が目的になって続かない。


1つに絞る理由は、さっきの50件と同じだ。初月に5つ書いた会社は、翌月には誰も開かない。自分たちが伴走で入るときも、最初の1か月でやるのはこれだけにしている。2か月目に「先月の1枚、使いました?」と聞けるかどうかで、その会社にこの運用が乗るか分かる。


AIのうまい使い方は、放っておくと1人の頭の中で腐る。大企業はそれを拾う機能を月10本の枠で買った。うちくらいの規模の会社が同じことをするのに要るのは、月10分と紙1枚だ。


書いた1枚を毎月どう太らせていくかは、AIで初稿は増えたのに、なぜマネージャーだけが忙しくなるのかに書いた。レビューで出た指摘をその場で直さず、1枚のほうへ戻す話だ。


参考:Anthropic「Smart Reports」ベータ提供開始(2026年9月10日)/GAI Insights「Anthropic's New "Smart Reports" Feature Is Impressive」/larridin「How to Measure Claude Usage on Claude Enterprise」

コメント


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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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