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ツールだけでは使われないと、売る側が先に認めた

11 分前
読了時間: 4分
誰も開けていない木箱が作業場の床に置かれ、そのそばに一度も使われていないバールが壁に立てかけられているイラスト

7月2日、Microsoft が25億ドルを投じて「Microsoft Frontier Company」を立ち上げた。6,000人の業界担当とエンジニアを顧客企業の中に常駐させ、AIの設計から運用まで一緒にやる部隊だ。TechCrunch が同じ7月2日に報じたところでは、その2日前に AWS も同じ型の部隊に10億ドルを出している。


ソフトを売る会社が避けたいのは、人手のかかる仕事だ。それを2社が同じ週に引き受けた。自分はこれを、売る側が「納品しただけでは使われない」を認めた合図だと読んでいる。


25億ドルと6,000人の使いみち

Frontier Company は初期の顧客として LSEG や Unilever などを挙げている。Accenture や PwC といったコンサル各社とも組む。


やることは forward deployed engineering(客先常駐エンジニア)と呼ばれている働き方だ。自社の技術者を顧客のオフィスに送り込んで、その場で組み立てる。Palantir が長くやってきた形を、今年に入って AWS と Microsoft が2日違いでなぞった。


エクサウィザーズの「AI新聞」とソフトバンクのビジネスブログは、FDEの解説記事で同じ理由を挙げている。汎用SaaSの時代は、製品を売って導入はパートナーに任せる形で回っていた。生成AIは進化が速すぎて、パートナー企業が教育を追いつかせられない。だから自分で行くしかない。


客先に人を置くコスト

粗利が落ちる。売上が人数に縛られる。上場企業が嫌がる形に、Microsoft も AWS も自分から寄せた。


そこまでして埋めようとしているのは、製品と業務のあいだの隙間だ。ライセンスを渡した時点では、まだ誰の仕事も変わっていない。誰かが業務を選んで、出てきたものに合否を出して、直して、やっと使われ始める。その工程を顧客任せにしたままでは売れない、と両社が踏んだ。


「AIが社内で使われないのは現場の問題だ」という説明を、自分はこの2年でよく聞いてきた。Microsoft も AWS も、その説明を採らなかった。


中小企業に割り当てる2つの役

常駐が来るのは、1人あたりの単価が成り立つ規模の会社だけだ。従業員30人の会社に6,000人のうちの1人が来ることは、この先もない。


ただ、埋める隙間は同じものだ。だから同じ役割を、自社の誰かに割り当てるしかない。要るのは2つの役で、AIに詳しい人を探す必要はない。


ひとつは、どの業務に使うかを決める役。業務を選んで順番を付けるだけなので、経営側が持てば早い。


もうひとつは、出てきたものの良し悪しを判断する役。こちらはその業務の合格ラインを知っている人にしかできない。見積書のチェックなら見積書を何百枚も見てきた人、請求の突合なら経理の主任。AIが出したものを見て、直すか捨てるかを即決できる人のことだ。


2つ目は指名で決めてください。公募や立候補には出さないこと。手を挙げるのはAIが好きな人で、その人が業務の合格ラインを持っているとは限らないからだ。


「担当を決めても時間がない」への答え

時間がないというのは本当に起きる。自分が伴走に入るときも、ここでいちばん止まる。


だから割り当てるのは判断のほうだけにしている。業務そのものは渡さない。2つ目の役の人が触るのは、AIが出した成果物を10件ほど並べて、使えるものと使えないものに分ける作業だけ。自分が置いている目安は週30分で、伴走先ではこれで回っている。直すのも、作らせるのも、別の人でいい。


仕分けをする人を置かなかった会社では、社員がAIの出力を信用しなくなって、そのうち誰も開かなくなる。誰かが合否を出して初めて、周りがそれを仕事に使い始めるからだ。使った回数をいくら増やしても、合否を出す人がいなければ、社内の人はAIを「よく分からないもの」として扱い続ける。


紙に書く2行

Microsoft は、契約しただけでは動かないことを、25億ドルというやり方で確かめにいった。同じ結論は、紙2行で先取りできる。


「この業務でAIを使うと決めるのは(名前)」 「出てきたものに合否を出すのは(名前)」


埋まらない行があるなら、そこがいま止まっている場所だ。その行が埋まるまで、ツールは選ばなくていい。


どちらの役を誰に置くかで迷っているなら、30分の無料相談で一緒に決めている。業務の一覧を持ってきてもらえれば、その場で2行は埋まる。

参考:Microsoft「Microsoft Frontier Company」発表(2026年7月2日、公式ブログ)/AWS が2日前に同型の部隊へ10億ドルを出したという報道(2026年7月2日、TechCrunch)/エクサウィザーズ「AI新聞」のFDE解説/ソフトバンク ビジネスブログ「FDE(Forward Deployed Engineer)とは?」

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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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