top of page

AIの未来をリードする—メルマガ登録で最新情報をゲット!

AIの未来をリードする
メルマガ登録で最新情報をゲット!

AIの最新トレンドや活用事例、業界の動向を配信します。
・2週間に1回配信します
・メルマガの購読はワンクリックで解除できます
・メールアドレスが第三者に共有されることはありません

業種特化AIは、標準から外れた会社ほど合わない

2 日前
読了時間: 4分

更新日:22 分前

丸い抜き型を、輪郭が不規則にはみ出した生地に押し当てている手。型からはみ出した端が切り落とされて脇に散っているイラスト

業種特化AIは、自社に特化したAIじゃない。


9月に入って、この手の発表が国内外で続いた。3日にスキルノートが製造業のスキル管理に特化した「Skillnoteエージェント」を10月提供と発表し、10日にはOpenAIが投資銀行向けの「ChatGPT for Financial Services」を出している。OpenAIは金融以外の業種にも特化版を出す方針だと言っているので、「御社の業界向けです」という営業は、これから順番に回ってくる。


そのとき最初に見る数字がある。精度じゃない。自社の手順が業界標準からどれだけ離れているか、のほうだ。


9月に続いた、製造と金融の2つの発表

スキルノートのほうは、製造業300社への導入支援で溜めたノウハウが土台になっている。社内の資格や教育履歴を普通の言葉で探せて、誰をどこに置くかの判断を早める。既存利用企業向けのオプションという位置づけで、2028年までに50社の導入を目標としている。


OpenAIの金融版は、モルガン・スタンレーとエバーコアを設計段階から組んだ相手にして作られた。投資銀行とエクイティリサーチ(株式の調査)に的を絞っていて、企業価値の分析や提案資料の準備が最初から使える状態で入っている。


読者の大半は製造業でも投資銀行でもないはずだ。それでも自分がこの2つを並べたのは、作り方が同じだから。どちらも「この業界はだいたいこう動く」という型を先に決めて、その上にAIを載せている。


特化型AIが前提にしている「業界標準の型」

AIに詳しい井上研一さんが、5月のブログで「バーティカルAIは、自社特化AIになれるか」という問いを立てている。答えは、業種・業務には特化しているが自社には特化していない、というものだった。自分もここが要点だと思う。


作る側は、数十社から数百社の共通項として型を抜き出す。スキルノートなら300社分だ。抜き出した型はそのまま製品の前提になるので、自社の運用がその型に近い会社ほど、買ってすぐ動く。


遠い会社で起きるのは、設定と例外対応で時間を食うことだ。しかも月額を払いながら食う。


S&P Globalが北米と欧州の1,000社超に聞いた調査では、AI施策の大半を本番前にやめた企業が17%から42%に増えていた。実証実験まで進めたうちの平均46%が本番に届いていない。S&P Globalが原因に挙げているのは、モデルの性能より埋め込み方だった。


特化型は、この埋め込みの手間を製品側が先に肩代わりしてくれる商品だと思っている。肩代わりの中身が自社と合っていなければ、汎用のAIを自分で設定するのと同じ手間が、月額つきで戻ってくる。


商談でここまで話すと、たいてい「でも」が返ってくる。


「汎用AIを自分で設定するより速い」という反論

速い。自社の運用が業界標準に近ければ、実際にそうなる。これは認める。


ただ、中小企業でそこが近い会社を、自分はあまり見ていない。人が少ないぶん1人が複数の工程を兼ねていて、業界標準の分業と形が違うからだ。見積もりを書く人がそのまま発注もかけて請求も見る、みたいな持ち方をしている。業務の型が、業界のものではなく「うちの会社のやり方」として残っている。


同じ道はSaaSで一度通っているはずだ。業界向けの仕組みを入れたのに現場が使わず、結局Excelに戻る。現場は怠けていない。製品の前提と自社のやり方がずれていただけだ。特化型AIでも同じことが起きる。


買う前に測る、自社の手順と業界標準の差

やることは1つ。買う候補にしている業務の手順を、いまのやり方のまま1枚に書く。


誰が、何を受け取って、何を返すか。ここまでは10分で書ける。大事なのはその後で、例外の分岐も書くことだ。「この取引先のときだけ紙で回す」「金額が一定を超えたら社長が見る」あたりが、たいてい型からのズレの正体になる。


書けたら、商談で精度の話に入る前にその1枚を相手に見せて、これはそのまま入りますかと聞く。入らない箇所が、そのまま設定費用と例外対応の見積もりになる。答えられない相手なら、その時点で分かる。


自分たちがAI導入の伴走で入るときも、ツールを選ぶ前にこの1枚を作っている。ここが無いまま入れると、どのツールでも同じ場所で止まるからだ。


逆に、書いてみて業界標準とほぼ同じだったなら、特化型は買っていい。そのときは精度を見ればいい。


業種特化AIが増えること自体は、良い方向だ。汎用AIに毎回一から状況を説明する手間が減るなら、その分は素直に得になる。


ただ、特化の中身は業界であって、自社ではない。次に「御社の業界向けです」と言われたら、デモの前に自社の手順を1枚書いて、それを持って机に着いてほしい。合うかどうかは、その1枚の上でしか分からない。

参考:OpenAI「ChatGPT for Financial Services」発表(2026年9月10日、CNBCほか報道)/株式会社スキルノート「Skillnoteエージェント」発表(2026年9月3日)/S&P Global の企業AI調査(北米・欧州1,000社超)/井上研一「バーティカルAIは、自社特化AIになれるか」(2026年5月29日)

コメント


b367c377-a8c4-411a-a21e-e5d603bcd498 (1).jpg

スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

bottom of page