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AIの効果を削減時間で測る会社が、翌年に止まる

10 分前
読了時間: 4分
倒れたドミノの列が途中の広すぎる隙間で止まっていて、指がオレンジ色のドミノを1枚その隙間に差し入れ、まだ立っている先の列へ繋ぎ直そうとしているイラスト

「年間で何時間くらい削減できそうですか」


AI導入の相談でこれを聞かれたら、自分は内心で少し身構えるようになった。この質問から入った案件は、だいたい2年目の更新の会議で止まる。止まる場所まで毎回同じです。


削減時間は、母数の大きい会社でしか意味を持たない数字だからだと思っている。


44.8万時間を、配った人数で割る

パナソニック コネクトが2025年7月7日に出したプレスリリースに、社内AIアシスタント「ConnectAI」で2024年に44.8万時間を削減した、とある。前年比2.4倍。利用回数は年間240万回。


立派な数字で、記事もよく回った。中小企業の稟議書にまで「年間◯万時間削減」と書かれるようになったのは、この手の発表からだと思う。


ただ、ConnectAI は2023年2月に、国内社員およそ1万2500人を対象に展開を始めています。44.8万時間をその人数で割ると、1人あたり年36時間ほど。月に直すと3時間弱になる。


2024年までに対象が増えていれば、1人あたりはもっと小さくなる。どちらに転んでも、これから書くことの向きは変わりません。


月3時間は、対象の人数で割った平均です。実際に毎日触っている人はもっと浮かせているし、一度も開かない人もいる。それでも全社の平均がこの水準だという事実のほうを見てほしい。


1人あたり月3時間という同じ使われ方で考えると、人数がそのまま効きます。仮に倍の月6時間まで伸ばしても、社員1250人の会社なら年9万時間。44.8万時間を作っているのは頭数のほうです。


20人の会社で年700時間が浮いたあと

1人あたり月3時間で社員20人の会社が使うと、年700時間ほど。年2000時間を1人分と置けば、0.35人分です。


その0.35人分が、20人に薄く散る。誰も減らせないし、誰も1日まるまる空かない。


しかも行き先を決めていないと、数か月で元の仕事量に戻る。空いた分だけ、別の仕事が入ってくる。これは伴走先で何度も見ました。半年後に「で、結局どうなりました」と聞くと、みんな忙しそうにしている。


時間は浮いた。浮いた時間で何をするかを、誰も決めていなかった。


それでも稟議書には「年700時間削減」と書いてある。翌年の更新のとき、この数字を証明できる人が社内に誰もいない。そこで契約が止まります。


着手までの日数

提案書の作成依頼を受けてから、社長の机に最初の1枚が乗るまで。問い合わせが来てから、返信の下書きが上がるまで。伴走の現場で実際に効いたのは、この日数でした。


AIが効き始めると、ここが真っ先に縮みます。担当者が手を付けられずに寝かせていた3日が、半日になる。作業そのものは元から30分だったりする。消えているのは、机の上で寝ていた3日のほうです。


しかもこの数字は数えやすい。依頼した日と、初稿が出た日。メールかチャットを見れば分かる。ストップウォッチを持って現場に立つ必要はありません。


余力があれば、あと2つ。人手が足りなくて捨てていた仕事を、何件やれるようになったか。それから、1人しかできなかった作業を、何人が引き取れるようになったか。


どれも「動いた」を数えています。20人の会社では、そもそも人を減らせない。減らせないぶん、止まっていた案件が何件動いたかでしか差が出ません。


「時間で言わないと稟議が通らない」への答え

ここは正直に言います。稟議は時間で通していい。


着手までの日数が3日から半日になります、という話だけで予算がついた場面を、自分はまだ見たことがない。金額に換算できる数字が要る場面は実際にある。時間はそのために便利です。


分けてほしいのは、通すための数字と、続けるかどうかを決める数字です。


稟議は時間で書く。半年後の振り返りでは、着手までの日数と実行件数を見る。この2枚を最初から別々に用意しておくと、翌年の更新の会話が変わります。


どの数字を毎週見るかという話は、9月18日に別で書きました(https://www.ai-box.biz/post/three-numbers-first)。今日の話はその手前で、AI自体の効き目を何で測るかという1点です。


今期、決めること

AIを入れた業務を1つ選んで、依頼日と初稿日を記録してください。エクセルの2列で足ります。


3か月分あれば十分です。1か月だと、縮んだ分を「最初だから気合が入っていた」で説明されて終わる。3か月続けば、その言い訳が使えなくなる。


削減時間のほうも、測りたければ測っていい。捨てなくていいです。ただ、それを主役にすると、20人の会社では必ず外します。


次に「何時間削減できましたか」と聞かれたら、「どの仕事が何日早く動くようになったか」で返してみてほしい。経営者が相手なら、たいていそっちに食いつきます。


測り方から決め直したいときは、30分の無料相談で、業務を1つ選んで記録する2列まで一緒に決めます。


参考

  • パナソニック コネクト「『聞く』から『頼む』へシフトしたAI活用で年間44.8万時間の削減を達成」(2025年7月7日) https://news.panasonic.com/jp/press/jn250707-2

  • クラウド Watch「パナソニック コネクト、AI活用で年間44.8万時間を削減 2025年はエージェントの活用に注力」 https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2029002.html

  • パナソニック コネクト「AIアシスタントサービス『ConnectAI』を自社特化AIへと深化」(2023年6月28日。2023年2月からの国内約1万2500人への展開規模の出典) https://news.panasonic.com/jp/press/jn230628-2

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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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