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「AIを使える会社は1.2%」は、育て方の問題じゃない

  • 7月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:7月20日

すでに実がなっている庭からポット苗を手で持ち上げ、隣の空いた土地へ植え替えようとしているイラスト

AI人材の記事を読むと、だいたい「AIを活用している企業は1.2%しかない」あたりの数字から始まる。だから社内でAI人材を育てないと乗り遅れる、と続く。


先に結論を言う。この1.2%を育成不足の話として読むと、打ち手を間違える。足りていないのは育て方じゃなくて、社内でAIを実務で触る機会そのものだ。


1.2%が本当に示しているのは「実務機会の不在」

なぜ社内でAI人材が育たないのか。答えは単純で、育てる場がないからだ。


実務でAIを回している現場がほぼない。だから経験が積めない。経験がないから、大事な仕事はまだ任せられない。任されないから、また経験が積めない。ニワトリと卵がぐるぐる回っているだけで、外から「まず育成を」と声をかけても、この輪は回りださない。


1.2%という数字は、育て方が下手な会社が98.8%ある、という意味じゃない。そもそも社内に練習台がない会社が、それだけあるということだ。ここを取り違えると、研修を組んで満足して終わる。


育てるより、借りたほうが速い

練習台が社内にないなら、動いている現場を外から借りればいい。


自社だけで人を育てようとすると、教える人も、任せる仕事も、失敗できる余白も、全部自前でそろえる必要がある。1.2%の側にいない会社に、それは重い。それより、すでにAIを実務で回している相手と組んで、進め方や勘どころを借りたほうが速い。経験は、内製しなくても隣で一緒に手を動かせば移る。


「それは自社にノウハウが残らないのでは」と思うかもしれない。逆だ。一緒にやると、判断の基準が現場に残る。丸投げの外注と、隣で一緒に回すのは別物だ。


価値は「作れること」から「何をやらせるか」へ移った

もう一つ、人材の分類の話をしたい。


この手の記事はたいてい、研究者・エンジニア・プランナー・データサイエンティストみたいな職種で人材を分ける。ただ、これは生成AIが来る前の枠組みに見える。エージェント型のAIが普通に使えるようになって、価値の重心がずれたからだ。


いま効くのは、コードを書ける開発力そのものより、「AIに何をやらせるかを決める力(業務要件の定義)」と「出てきたものの良し悪しを見切る力(運用の目利き)」のほうだ。作る作業はAIが引き受ける。決めることと、見切ることが人に残る。


人材論から抜け落ちる「止め方の設計」

会計や人事のデータを扱う会社なら、もう一点だけ足したい。


AI人材を語る記事に、データの扱いやハルシネーション(AIがもっともらしい嘘を出すこと)への備えが、ほとんど出てこない。「使える人」の条件に、止め方を設計できることが入っていない。何を入力していいか、どこにデータが残るか、出力をどこで人が止めるか。これを設計できないまま現場に配ると、便利さと引き換えに事故のリスクだけが増える。


AIを使える、とは、アクセルを踏めることじゃない。ブレーキの位置を決められること込みだ。


「AI人材が必要」で終わらせない

最後に、読み方のコツを一つ。


「AI人材が必要だ」と煽ってから、結びで「だからこのツールを入れましょう」に着地する記事は多い。人の必要性を出しに使って、要件を下げるツールへ誘導する構造だ。ツールが悪いわけじゃない。ただ、記事の主語が「あなたの会社の課題」なのか「売りたい商品」なのかは、読み分けたほうがいい。


自分たちがAI導入の支援で、ツールの納品より使い方の設計に時間をかけているのも、同じ理由だ。誰がどの業務で、何をAIに渡し、どこで人が止めるか。ここを一緒に決めないと、ツールだけ入って現場で空回りする。


次にAI人材の記事を読むときは、1.2%を「育成が足りない」ではなく「実務の場が足りない」と読み替えてほしい。その一手だけで、打つべき次の手が変わる。育てるのか、借りるのか。まず現場を持つことが先だ。

参考: AI導入ツールを提供する企業のオウンドメディア掲載のAI人材記事(2026年7月閲覧)。FDE(Forward Deployed Engineer)的な「顧客の現場に入って何を作るべきかから決める」働き方については、別記事「「言われたことだけやる人」から、先にAIに置き換わる」も参照。

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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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