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危険なのはAIじゃない。「2つ」を決めずに使うことだ

  • 6月26日
  • 読了時間: 4分

更新日:7月3日

会議室のテーブルに広げた1枚の運用ルール表を複数の手が確認し、1つの項目に青い丸を付けている俯瞰写真

「AIは危険」という前提そのものが、いちばん危ない。


危ないのはAIじゃない。何のルールも決めないまま使うことだ。逆に言えば、決めるべきを決めれば、多くのリスクは現実的にコントロールできる。


論点はだいたい2つに割れる。入力したデータが学習に使われるか。データがどこに保管されるか。まずはこの2つの設定とルールを詰めるところから始めればいい。


この整理は、Xのちゃえんさん(@masahirochaen)が「AIって危険ですよね?」への回答として書いていた論点立てが分かりやすかったので、自分の実務での見方を足して書く。



「AIが学習する」の実際

まず学習の話から。法人プランやAPIでは、入力したデータがモデルの学習に使われないのが基本です。OpenAIもAnthropicもGoogleもMicrosoftも、法人向け・API・業務利用については学習に使わない設計を利用規約に明記している。


チームプラン(法人契約)なら、そもそも学習の対象外。だから「学習をオフにする設定」という概念自体が存在しない。ここを知らずに怖がっている人が、かなり多い。


気をつけるのは個人向けプランのほうです。サービスや設定によって扱いが変わり、既定で学習利用がオンになっている場合もある。


だから個人プランを業務で使うなら、まず設定を開いて学習利用をオフにする。ChatGPTもClaudeも、設定で学習されないようにできます。


「学習される」と聞くと、入力した文章が丸ごとどこかに保存されるイメージを持つ人がいる。でも実際は大量のデータからパターンを学ぶ処理で、入力がそのまま倉庫に積まれるわけじゃない。


ただし、学習データの一部が記憶・再現されるリスクはゼロとは言えない。だから機密情報・個人情報・社外秘を安易に入れないというルールは、学習設定とは別に必ず要る。設定で守る部分と、ルールで守る部分は分けて考える。


データの保管場所という論点は、AIだけの話じゃない

もう1つが保管場所です。ここで大事なのは、これはAIに固有の問題じゃないということ。


SaaSやWebサービスを使う限り、運営企業に何らかの形でデータを預けることになる。Google Workspace、Microsoft 365、Slack、Salesforce。自分たちはすでに大量の外部サービスに囲まれて仕事をしている。


その状態で、GeminiやCopilotだけを極端に怖がるのは、正直なところ基準が曖昧です。管理体制のよく分からないSaaSにファイルを置くのと、本質的には同じ論点なので。


もちろん、金融・官公庁・医療などで、完全にネットに繋がない端末やオンプレミスだけで運用している組織なら、慎重になるのは理解できる。でも多くの企業は、すでにクラウドもSaaSも使っている。


だったらAIだけを禁止するんじゃなく、「どのサービスに、どの情報まで預けてよいか」の基準を引くほうが筋がいい。


保管場所を決めると、付随して効いてくるものがある。法規制、どの国の管轄になるか、政府からの開示請求リスク、応答のレイテンシ、運用効率。これらが置き場所で変わる。


日本企業、特に大企業・金融・医療・自治体なら、日本リージョンにデータを置く構成が理想です。Google CloudにもAzureにも日本リージョンがあって、国内にデータを留める選択肢は用意されている。


怖さの正体は、決めていないこと

結局、「なんとなく怖い」の正体は、線を引いていないことだと思う。逆に、次のあたりを決めて明文化すれば、漠然とした不安はかなり具体的な運用に変わります。

  • 入力してよい情報/入力してはいけない情報

  • 利用してよいAIサービス

  • 法人プラン・APIで使うこと

  • ログ管理

  • 権限管理

  • データの保管場所

  • 社内教育

このうち設定で機械的に守れるのは一部で、残りは運用と教育で守る。どうしても入れたくない情報があるなら、それを明文化した上で社員教育を徹底する。


ただし、人間はミスをする前提で組んでおいたほうがいい。「絶対に入れない」を人の注意力だけに頼ると、いつか漏れる。だから入力チェックの仕組みや、そもそも機密を扱う業務はAIの導線から外す、といった設計まで含めて考える。


使わないリスクのほうが、たぶん大きい

ここまでリスクの話をしてきたけど、最後に逆側も書いておきます。AIを使わないことのリスクも、すでにかなり大きい。


インターネットが出てきた頃、オンラインショッピングは「本当に買ったものが届くのか分からない」と思われていた。今はインフラです。AIも同じ道をたどると自分は見ていて、業務や生活の一部として当たり前に組み込まれていく。


その流れの中で「怖いから使わない」を続けると、リスクを避けたつもりで、機会のほうを丸ごと失う可能性がある。


それと、過剰に身構えている人には一度こう問い返したい。「そもそも、それは学習されて困るほどの情報なのか?」と。リスクは情報の機微で線を引くもので、何もかもを一律に怖がるものじゃない。


本当に守るべき情報を見極めて、そこだけ固く守る。残りは普通に使う。


AIは「怖いから禁止」じゃなく、「正しく設計して使う」もの。設定を確認して、線を引いて、教育する。やることは地味だけど、これで多くのリスクは現実的に手の内に収まります。

コメント


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スノーリーズ株式会社​

代表取締役

石黒翔也

​執筆者プロフィール

約7年間にわたりモバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発、AzureやAWSを活用したサーバー構築に従事。

その後、2021年にスノーリーズ株式会社を設立し、AIで問い合わせ業務の効率化を実現する「AIbox」を開発。

AIboxは最新のRAG技術(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、問い合わせ業務に課題を抱える企業に採用されています。

現在は、企業の技術顧問としても活動しながら、AIやクラウド技術の普及に取り組んでいます。

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