1. OCRとは?
まず、**OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)**とは、画像から文字情報を抽出する技術です。従来のOCR技術は、主に印刷された文書や手書き文書をスキャンし、特定のフォントやパターンを基に文字を認識して機械が読み取れるデータに変換します。
通常のOCRは、事前に定められたフォントや構造に適した文書の認識に向いていますが、複雑なレイアウトや異なるフォントの文字には弱く、誤認識が発生しやすいという欠点があります。そのため、OCRは、フォーマットが決まった申請書や帳票のデジタル化など、構造が安定したデータに特化して使用されてきました。
2. AI-OCRとは?
AI-OCRは、従来のOCR技術に**AI(人工知能)**を組み合わせた技術で、特にディープラーニング(深層学習)を用いて文字認識の精度を飛躍的に向上させたものです。AIが大量のデータを元に様々なパターンを学習することで、従来のOCRでは認識が難しかった異なるフォントやレイアウト、手書き文字なども高精度で読み取れるようになっています。
AI-OCRの特長には以下が含まれます:
機械学習とディープラーニング:AI-OCRは、機械学習とディープラーニングのアルゴリズムを用いて膨大なデータから学習し、特定の条件に依存しない柔軟な読み取りが可能。
自己学習機能:AI-OCRは、使用する中でユーザーの操作や訂正を元に自己学習し、認識精度をさらに向上させます。
このように、AI-OCRは多くのデータや高度なアルゴリズムを使ってトレーニングされているため、従来のOCRが得意とする定型的な文書のみならず、非定型の書類や複雑なレイアウト、さらには手書き文字の読み取りにまで対応することが可能です。
3. OCRとAI-OCRの技術的な違い
従来のOCRとAI-OCRの技術的な違いは以下の通りです。
特徴 | OCR | AI-OCR |
認識精度 | 中程度 | 高精度(特に不規則なフォントや手書きに強い) |
対応フォーマット | 制限が多い | 様々なフォントや手書き、複雑なレイアウトにも対応 |
学習能力 | 無し | あり(使用中のデータで自己学習) |
処理速度 | 高速 | 学習フェーズで時間がかかるが実用時は高速 |
エラー訂正 | 制限あり | AIによる自動補完、エラー訂正が可能 |
4. AI-OCRがもたらすメリット
AI-OCRは、通常のOCRが不得意とする複雑な文書にも対応できるため、次のようなメリットがあります。
多言語対応:ディープラーニングの力で多言語対応が進み、英語や日本語以外の文書にも対応。
高い柔軟性:フォントやレイアウトが不規則な文書、手書きの読み取りが可能。
モデルの改良:クラウドベースのAI-OCRサービスは、サービス提供者側で定期的にモデルの改良が行われ、精度が向上するケースがあります。 ただし、使用するごとに自動で学習し精度が向上するわけではありません。より高精度な認識が必要な場合には、企業側でカスタムモデルをトレーニングできる機能が提供されているサービスを利用するのも一つの方法です。 また、Azure Document Intelligenceなどが提供するクエリフィールドを活用することで、独自に取り出したい項目を指定して精度を補完することも可能です。
5. クラウドベースのAI-OCRとオンプレミスの違い
AI-OCRは、クラウドベースとオンプレミスの両方で提供されています。それぞれのメリット・デメリットを理解し、用途に合わせて選択することが重要です。
クラウドベースのAI-OCR
Azure Document Intelligence、Google Cloud Platform(GCP)、Amazon Web Services(AWS)などのクラウドAI-OCRサービスは、ユーザーがインフラを構築することなく利用できるため、初期費用が抑えられるケースが多いです。これらのサービスは、すでに大量のデータで学習されたAIモデルを活用できるため、スピーディに導入を進められ、スケーラビリティも優れています。
クラウドベースのAI-OCRサービスには、請求書や注文書などの特定のドキュメントタイプに対応した特化型モデルが用意されています。この特化型モデルは、一般的な文書の読み取りとは異なり、請求書の金額や日付、注文書の品目情報など、特定のフィールドを自動で抽出するよう最適化されており、企業のニーズに応じたドキュメントの読み取り精度が向上しています。
さらに、モデルに改良を加えることもできるのがクラウドAI-OCRの大きな特徴です。例えば、Azure Document Intelligenceでは「クエリフィールド」という機能を利用して、独自に取り出したい項目を指定し、必要なフィールドのみを抽出することが可能です。これにより、標準的なフィールドに加えて企業独自の項目(例:顧客コードやプロジェクト名など)を自動で抽出できるようになります。
初期コストの軽減:クラウドサービスの場合、自己学習モデルやインフラの準備が不要で、使用量に応じた料金のみで導入が可能です。
高いスケーラビリティ:クラウドのため、データ量やユーザー数が増加してもスムーズに対応できる。
セキュリティとプライバシー:各プラットフォームは高度なセキュリティ対策が施されており、機密データの安全性が確保されています。
オンプレミスでのAI-OCR
オンプレミスでのAI-OCR導入は、カスタマイズ性やデータの完全な管理が可能であり、データプライバシーの強化が必要な場合に適しています。一方で、インフラの準備や初期投資、学習データの準備が必要となるため、導入までにコストと時間がかかるケースがあります。
カスタマイズの自由度:企業独自の仕様に合わせたカスタマイズが可能。
完全なデータ管理:クラウドではなく社内ネットワークでデータを管理するため、情報漏洩リスクを最小化できる。
6. AI-OCRとOCRの実用例
AI-OCRとOCRは、用途やニーズに応じて選ばれることが多く、以下のような場面で使用されます。
通常のOCR:
定型化された書類(例:フォームや申請書)
高速処理が求められる大量文書のデジタル化(例:過去の資料のデータ化)
AI-OCR:
不規則なレイアウトや複数の言語が混在する文書(例:契約書や領収書)
手書きが多く含まれる医療分野のカルテやアンケート用紙
顧客情報の自動入力(例:金融や保険業界の証券やIDカード)
7. AI-OCRが抱える課題
AI-OCRには多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。
初期コスト:オンプレミスでの導入には初期費用や学習データの準備が必要ですが、クラウドベースのAI-OCR(例:Azure Document Intelligence、GCP、AWS)は、こうした初期コストを抑えることができる場合もあります。クラウド型サービスは、利用料金のみの支払いで済むため、柔軟に利用開始できる利点があります。
プライバシーとセキュリティ:AI-OCRが扱うデータには機密情報が含まれることが多いため、クラウド利用時のセキュリティ管理が重要になります。
処理速度:大量データや新しいフォーマットの学習には通常のOCRよりも時間がかかる場合があり、リアルタイム処理には工夫が必要です。
8. 今後の展望
AI-OCRは今後も進化が続き、より高度な精度や多言語対応、文脈理解機能が実現されると考えられます。これにより、金融、医療、法務などの分野でさらに幅広い活用が期待されます。例えば、AIが文脈を理解することで文書の要約や分類が可能となり、業務の効率化が進むでしょう。
9. まとめ
AI-OCRと通常のOCRの違いについて解説しました。従来のOCR技術はシンプルな文書のデジタル化に優れ、AI-OCRは高度な精度と柔軟性が求められる場面で強みを発揮します。クラウドベースのAI-OCRサービスは初期コストを抑えつつ、すでに学習されたモデルや、特定のドキュメントタイプ(例:請求書、注文書)に特化した事前学習済みモデルを提供しており、企業ごとに柔軟な対応が可能です。さらに、Azure Document Intelligenceのクエリフィールドのような機能を活用することで、企業独自の要件に合わせたフィールド抽出が実現でき、業務効率の向上が期待されます。
企業や業界によって、適した技術を選択し活用することで、業務効率の向上とデータのデジタル化がより一層進むことが期待されます。
AI-OCR導入でデジタル化の効率を上げるなら、社内問い合わせ対応の効率化にも注目を!
この記事で紹介されたAI-OCRは、業務におけるドキュメントのデジタル化を大幅に効率化しますが、社内対応をさらに効率的にするなら「AIbox」の導入も視野に入れると良いでしょう。
AIboxは、社内のあらゆる問い合わせ対応をAIに任せることで、バックオフィス業務の効率化をサポートするツールです。問い合わせ内容の多くはFAQに関するものであることが多く、これに自動で即答することで、業務の負担が軽減されます。
AIbox導入のメリット
RAG機能で高精度な回答が可能「AIbox」はRetrieval-Augmented Generation(RAG)という技術を搭載。社内のマニュアルや過去の問い合わせデータ、FAQなどを参照して、内容に基づいた精度の高い回答を提供します。これにより、従来のチャットボットよりも使いやすく、頼れるサポートが実現します。
スムーズな社内コミュニケーション社内でよく利用されるSlackとの連携機能により、AIboxはSlack内の情報も検索対象にすることが可能です。例えば「経費申請の締め切りを知りたい」といった質問も、Slackから直接AIに問い合わせることで即座に回答を得られ、業務が止まることなく進みます。
徹底サポートと安全性AIboxは、Azure OpenAIサービスを活用した高いセキュリティ性も特徴です。利用データが外部のOpenAI社に送信されることはなく、企業内の機密文書も安心して取り扱うことができます。さらに、導入時や運用後のデータ整備についても専門スタッフが支援し、スムーズな導入と安心運用が可能です。
こんな部門での活用が進んでいます
経理、総務、人事などのバックオフィス:各部門で必要なFAQやマニュアルをAIboxに登録することで、社員からのよくある問い合わせ対応が自動化され、日常的な業務負担が軽減されます。
カスタマーサポート:エクセルや問い合わせ履歴などのデータをAIに読み込ませておくことで、過去の対応履歴から適切な回答をAIが自動生成。お客様からの問い合わせに、的確で素早い回答を提供できます。
AI-OCRによるドキュメントデジタル化とともに、社内対応も自動化することで、日々の業務負担を減らし、本来の業務に集中できる環境が整います。AIboxの導入で、生産性向上と効率化を進めてみてはいかがでしょうか?
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スノーリーズ株式会社について
バックオフィス向けソリューション AIboxについて
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